Photo by: Marc Goss
Photo by: Marc Goss

平穏な日本の生活の中で買う象牙のハンコがテロ組織に貢献していることを知っていますか?


紛争象牙と問題

一向に減る傾向を見せないアジアの国々の象牙需要と、共にとどまることを見せずに跳ね上がり続ける象牙の市場価格。2008年にキロ157ドルだった象牙価格は、2012年には15倍以上のキロ2,357ドルまで跳ね上がりました。象牙1本の値段は、アフリカ人の平均年間収入の20倍以上もの値段にもなっているのです。そして高額で取引される象牙は中国では「ホワイトゴールド」と呼ばれ、その販売ルートは麻薬シンジケートや暴力団によってコントロールされていきます。さらにアフリカ諸国のテロリストグループや反政府組織は象牙による外貨獲得と、それによる武器購入を広く行い始め、象牙は紛争地帯の資金源と化していきます。


アルカイダ・グループとつながっているとされ、ケニア内で数多くの爆破事件を起こしているソマリアのイスラーム勢力のアル・シャバブ、スーダン西部ダフール地区で2003年以降3万人もの非アラブ人国民の民族浄化をしたとされる武装騎馬隊ジャンジャウィード、住民の殺害や子供の少年兵としての拉致や性的搾取などで知られるコンゴ民主共和国のコンゴ・神の抵抗軍Congolese Lord’s Resistance Army)などが、紛争象牙を資金源として使用しているのが最近になり表立って知られだしました。得にジャンジャウィードによるカメルーン北部のブバ・ンジダ国立公園での約500頭のゾウの殺戮は国際ニュースで取り上げられ、世の中を驚かせました。

ケニアの首都ナイロビとタンザニアのダルエスサラームで起こったアメリカ大使館同時多発テロ爆発事件で、テロリストが使った資金は5万ドルと言われています。アフリカゾウの象牙1本の平均は13.5キロ。現在の象牙価格に換算するとさらなる爆破事件を起こす為にはわずか1.6本の象牙で資金調達が可能なことになります。

各テロ組織に関して:


****「アル・シャバブ」****Al-Shabaab

ソマリア南部を中心に活動するイスラーム勢力。2012年現在、ソマリアで最も有力なイスラーム勢力であり、ソマリア南部で最も支配地域が広い勢力でもある。ソマリア暫定連邦政府とそれを支援するエチオピアアメリカ合衆国アフリカ連合などと対立している。ソマリア南部の都市キスマヨを支配するヒズブル・イスラムアルカーイダエリトリアなどと交流があるとされる。

****「ジャンジャウィード」 **** Janjaweed

スーダン西部ダルフール地方のアラブ人の主にバッガーラ族からなる民兵組織。2003以降のダルフール紛争の主要な当事者であり、アラブ人が支配するスーダン政府の支援を受けて非アラブ人国民に対して民族浄化を行なっている。彼等によって殺害されたのは、2003年以降で1万人とも3万人とも言われている。

****神の抵抗軍**** Lord’s Resistance Army

1987ジョゼフ・コニーによって結成された。主にコンゴ民主共和国東部、ウガンダの北部地域と南スーダンの一部で活動しており、ウガンダ政府軍との紛争は、アフリカで進行中の長期紛争の1つである。コニーは自らを霊媒であると主張し、十戒アチョリの伝統に基づく国家建設を掲げている。LRAによる被害の中でも子供に対する犯罪は特に深刻で、子供を拉致し、強制的に少年兵にしたり、性的搾取をしたりして国際的な非難をあびている。


密猟のゾウへの影響

象牙と密猟にまつわる作り話や誤解

一般的に思われがちなのは象牙はゾウから自然に抜け落ちたり、麻酔銃を使って殺さずゾウから収穫したなどです。そんな事実はどこにもありません。象牙は生涯自然に抜け落ちないので、どんな象牙であろうが、物理的にそのゾウが死なない限り象牙は手に入りません。象牙はゾウの門歯の変形です。なので、歯茎、そして頭蓋骨につながっています。この動画を見てください。(動画リンク)このように死んだゾウから切り出さないと収穫できるものではないのです。

その他、象牙目当ての密猟の犯人たちが、生活に困っている貧しい人であるということも誤解です。貧しい地元の人間が生活のためにブッシュミート目当てで小動物を捕まえるのとは異なります。象牙の密猟者は銃や斧などを所持して武装し、密猟をしていないときは強盗やレイプ、殺人などを犯す列記とした地元や海外の犯罪組織とつながりのある犯罪者なのです。象牙取引が自然保護の資金貢献にもつながるという説もありますが、そんなことはありません。象牙を買い続けるということは、犯罪者の金儲けに貢献している事になります。

 

現状と書類のギャップ

合法に取引されている象牙はどこから来たものか?

象牙の国際取引には、「ゾウの保護に役立つ適切な国際取引」と「ゾウを絶滅に追いやる違法な国際取引」 の二つがあると言われています。書類上はそうかもしれませんが、実際にはそれほど簡単には片付けられません。合法象牙の取引の本来の目的は、象牙市場に合法象牙を過剰に供給することで密猟を減らす為のものでした。しかし、実際にはその正反対のことが起きてしまいます。合法象牙取引が象牙市場に加算されたことで、象牙の需要が復活して象牙価格が上がってしまい、違法象牙取引も復活してしまったのです。自然死や害獣コントロールで殺されたゾウの象牙だけが取引の対象になるという国際象牙取引条件の裏側には、 「アフリカゾウの乱殺」と「象牙のローンダリング」 (違法象牙を合法の象牙として流通させる)という暗い真実が隠されており、それは世の中の人に知られないまま、アフリカ大陸に再びその魔の手を広げ始めたのです。

 

密猟による生態への影響

アフリカゾウの個体数が減ることによって生態系には大きな影響を与えます。まず、彼らはブッシュを倒しながら移動するので、他のどうぶつたちが使う獣道ができます。旱魃の水が無い環境でゾウが掘り当てた水を他のどうぶつも頼ったりします。その他、ゾウが食べる草木の種は彼らが排泄することによって、土地に分散されます。例えば、南部アフリカのララパームというヤシの木の分布はゾウが通ったあとを示していると言われています。これはいくつかの例だけです。ゾウに頼っている動植物の種類は多種あり、ゾウが減ったりいなくなったりすれば環境に大きな影響が出ます。


ゾウ自身にも密猟による激減の影響が既に出て来ています。ケニアのサンブル地方に住むゾウの群れは、密猟によって群れの構成までが変わって来ています。大きな象牙を持つ雄の個体が密猟者に狙われることから、サンブル地方のゾウの人口は、70%が雌で出来ています。雄の減少のため、14%の群れが、25歳以上の繁殖可能な雌のいない状態で群れが構成されてしまっています。マサイマラ国立保護区と近辺のエリアでも、2012 年のみで95頭のアフリカゾウが密猟者の手によって 死を迎え、そのうち83頭はやはり大きな象牙を持つ雄の個体でした。


変化するに密猟の手立て

ゾウの密猟方法もシチュエーションごとに変化していき、密猟パトロールの手も追いついていないのが現状です。パトロールを行なうレンジャーがいない保護区の外のエリアでは機関銃が主に使われ、銃声がレンジャーに聞こえるエリアでは、音がしない毒矢や槍を使ってゾウが殺され続けています。最近ではゾウの好物のカボチャを刳り貫き、強力な毒であるカーボヒューラン系殺虫剤フューラダンを詰め込んで、ゾウの歩く道に置いておくケースなども出て来ています。象牙産業が続き、ブラックマーケットが繁栄し続け、その背景にいる犯罪組織も強くなり続けると、ますます密猟者達も武器やトラップにお金をかけられようになってきています。日々進化して行く密猟の技術に備えるために、保護活動も進化させて行かないと行けないのです。「アフリカゾウの涙」で集まった資金は、フィールドにおいての密猟阻止活動の資金であったり、需要減らすためのキャンペーンに使わせて頂いています。